マスクで隠れているから大丈夫?歯科医師が伝えたい「マスク生活と口臭・口腔ケア」

マスクで隠れているから大丈夫?歯科医師が伝えたい「マスク生活と口臭・口腔ケア」
「どうせマスクをするから,今日は歯磨きは簡単でいいかな」「人から口元を見られないから,以前ほど歯のことが気にならなくなった」——そんなことはありませんか。新型コロナウイルスの流行をきっかけに,私たちの生活にはマスクがすっかり定着しました。感染対策や花粉症,仕事上の理由など,今でも日常的にマスクを使用している方はたくさんいます。
結論からお伝えすると,マスクをしているからといって,自動的に歯周病や虫歯になるわけではありません。ただし,マスク生活は「口の乾燥」「口臭」を自覚しやすくすることが,複数の調査でわかっています。マスクには大切な役割がありますが,歯科医師として一つだけ気になっていることがあります。それは,マスクで口元が隠れているから,歯や口の中への関心まで隠れてしまっていないかということです。
マスクをするようになって「自分の口臭」に気づいた人も
興味深い研究があります。3,750人を対象とした研究では,マスクをしていないときと比べて,マスク着用時には口腔乾燥と口臭を自覚する程度が有意に高くなったと報告されています。しかもマスクの着用時間が長くなるほど,その傾向がみられました。
別の300人を対象とした調査でも,38%がマスクを日常的に使うようになってから口臭をより感じるようになったと回答し,42.7%が口の乾燥感の増加を感じていました。日本歯科医師会も,マスク生活では息苦しさなどから口呼吸になり,口腔内が乾燥すると,唾液による自浄作用が低下して口臭などにつながる可能性について注意を促しています。
ただし「マスクをすると歯周病になる」わけではありません
ここは誤解しないでください。「マスクを長時間つけると口の中の細菌が増えて,必ず虫歯や歯周病になる」とまで言える科学的根拠はありません。実際,健康な歯科学生25人を調べた研究では,長時間のマスク使用によって,唾液量,歯肉の状態,プラーク,口腔細菌叢に有意な悪化は認められませんでした。
つまり問題は,「マスクそのもの」だけではなく,マスク生活に伴う口呼吸・乾燥や,日々の口腔ケア習慣の変化と考えた方がよいでしょう。
「どうせ見えないから」は要注意
ここを私は一番伝えたいと思います。マスクをしていれば,多少歯に着色があっても見えません。口元も見えません。他人との距離もあります。すると,「まあ,いいか」となってしまう。
でも,マスクは歯を守ってくれるわけではありません。マスクの下でも,プラークはたまります。歯周病も虫歯も,マスクをしているかどうかとは関係なく進行します。特に歯周病は,初期には強い痛みがないまま進行することがあります。だから,「見えないからこそ,忘れない」でほしいのです。
マスクを外した瞬間,「口臭,大丈夫かな?」
マスク生活になって,自分の息のにおいが気になり始めた方もいると思います。口臭にはさまざまな原因があります。起床時などに強くなる生理的な口臭もありますが,舌苔・プラーク・歯周病・口腔乾燥などが関係することもあります。日本歯科医師会も,口臭の主な原因の一つとして舌苔を挙げています。
だから「マウスウォッシュでいい香りにすればOK」と考えるのではなく,まず口臭の原因を減らすケアを考えましょう。
歯科医師としておすすめしたい「マスク生活の5つの口腔ケア」
難しいことをする必要はありません。まずは,この基本を大切にしてください。
- 歯ブラシで丁寧に磨く
- フロス・歯間ブラシも使う
- 舌苔が多ければ,舌をやさしくケアする
- 口が乾燥しやすい人は水分補給や保湿を意識する
- 定期的に歯科医院でチェックしてもらう
①歯ブラシだけで終わらせない
歯ブラシは基本です。しかし歯と歯の間など,歯ブラシだけでは清掃しにくい場所があります。毛の硬さやヘッドサイズは歯並び・歯ぐきの状態で最適なものが変わるので,選び方は別記事も参考にしてください。
歯ブラシの選び方|毛の硬さ・ヘッドサイズ・毛先の形状を歯科医師が解説 →
②フロス・歯間ブラシで,歯と歯の間もケアする
そこで使ってほしいのがデンタルフロスや歯間ブラシです。「夜だけフロスを追加する」など,続けられるところから始めてください。
③舌が白いからといって,ゴシゴシ磨かない
口臭が気になると,「舌が白い!これを全部取らないと!」と考える方がいます。舌苔は口臭の原因の一つですが,舌は非常にデリケートです。硬い歯ブラシなどで強く何度もこする必要はありません。舌ケア用品を使う場合もやさしく行ってください。
なお,舌が白くなる原因は舌苔だけではありません。白いものが取れない,痛い,赤みがある,長期間続く場合などは歯科医院で確認してください。
④口が乾燥する人は「保湿」という選択肢も
「マスクをしていると口が乾く」という方は,まず鼻呼吸やこまめな水分補給を意識してみてください。それでも口腔乾燥が気になる方には,口腔用の保湿ジェルなどもあります。
※強い口腔乾燥が長く続く場合は,単なるマスク生活だけが原因とは限りません。服用している薬や全身状態などが関係する場合もあるため,歯科医院などに相談してください。
「口臭をごまかす」より「原因を探す」
ここも大切です。口臭が気になると,香りの強いマウスウォッシュ→ガム→タブレットと,「においを隠す」ことばかり考えてしまいがちです。でも,歯周病が原因なら歯周病への対応が必要です。舌苔なら適切な舌ケア。磨き残しならブラッシングやフロス。口腔乾燥なら,その原因を考える。「なぜ口臭がするのか」を考えることが,歯科医師としておすすめしたいアプローチです。
こんなときは口腔ケアグッズだけで済ませないで
口臭に加えて,次のようなことがあれば,一度歯科医院へ行きましょう。
- 歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが腫れる
- 歯がグラグラする
- 口の中が非常に乾く
- 舌や粘膜に治らない変化がある
- 家族から強い口臭を繰り返し指摘される
「口臭が気になるので診てください」だけでも構いません。
よくある質問
マスクをしていれば,歯磨きは適当でも大丈夫ですか?
いいえ。マスクは口元を隠しますが,プラークや歯周病の進行を防いでくれるわけではありません。マスクの有無に関わらず,普段どおりの丁寧なケアを続けてください。
マスクによる口臭は,マウスウォッシュだけで解決しますか?
香りでごまかすだけでは根本的な解決になりません。舌苔・プラーク・歯周病・口腔乾燥など,口臭の原因を見極めたうえで,それぞれに合ったケアを組み合わせることが大切です。
口腔保湿ジェルはどんな人向けですか?
鼻呼吸や水分補給を意識しても口の乾燥が気になる方の,セルフケアの選択肢の一つです。強い乾燥が長く続く場合は,マスク以外の原因(服用中の薬・全身状態など)が関わっていることもあるため,歯科医院に相談してください。
歯科医師からひとこと
マスクは私たちの口元を隠してくれます。でも,虫歯も,歯周病も,口臭の原因も,マスクで隠したからなくなるわけではありません。むしろ私は,マスクをする時代だからこそ,マスクの下を大切にしてほしいと思っています。
朝,きちんと歯を磨く。夜は少し時間をかける。フロスを一本通してみる。舌の状態を見る。そして,ときどき鏡の前でマスクを外して笑ってみる。きれいな歯や健康な歯ぐきは,人に見せるためだけのものではありません。自分自身が健康に食べ,話し,笑うためのものです。
まとめ
- マスク着用と口腔乾燥・口臭の自覚には関連が報告されているが,「マスクで必ず歯周病になる」とは言えない
- 問題は「マスクそのもの」より,マスク生活に伴う口呼吸・乾燥や,ケア習慣の変化
- 「見えないから」を理由にケアを省略しない。基本は歯ブラシ+フロス・歯間ブラシ+やさしい舌ケア+乾燥対策の4つ
- 香りでごまかす前に,口臭の原因を考える。気になる症状が続くなら歯科医院へ
マスクを外したときにも,自信を持って笑える口元を。今日から,マスクの下の口腔ケアを少しだけ意識してみてください。もっと詳しく商品を比較したい方は,こちらの記事もあわせてどうぞ。
⚕️ 医療情報についてのご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としており,個別の診断・治療の代替となるものではありません。 症状・治療方針については,必ず歯科医師にご相談ください。 掲載情報は執筆時点のものであり,診療内容・費用・制度は変更される場合があります。
参考情報
- 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
https://www.jda.or.jp/park/ - 厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
監修:現役の歯科医師|監修・編集方針を見る ›
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