子どもが転んで前歯を打った|親がすぐにすべき応急処置と受診先

子どもが転んで前歯を打ったとき,親御さんがまず知っておきたいこと
お子さんが転んで前歯をぶつけてしまった――血が出ている,歯がグラグラしている,歯が欠けた,あるいは歯が抜けてしまった。そんなとき,親御さんは本当に慌ててしまいますよね。「このまま様子を見ていいの?」「夜間でも歯医者に行くべき?」と不安になる方がとても多いです。
このページでは,子どもが前歯を打ったときに,親御さんがその場でできる応急処置と,どこへ受診すればよいかをやさしく解説します。
まず落ち着いて確認したい3つのこと
- 意識はしっかりしているか(嘔吐・ぐったり・頭を強く打った様子がないか)
- 口の中・くちびる・歯ぐきからの出血の様子
- 歯の状態(抜けた/欠けた/ぐらぐら/ずれている/変色)
頭を強く打っていたり,意識がぼんやりしている,嘔吐しているなどの症状がある場合は,歯科より先に小児科や救急外来を受診してください。頭部外傷の対応が優先されます。
ケース別:親がすぐにすべき応急処置
① 歯が完全に抜けてしまった(脱落)
永久歯が完全に抜けた場合,できるだけ早く元の位置に戻せると,歯を残せる可能性があります。ポイントは「乾燥させないこと」です。
- 抜けた歯は絶対に乾燥させないでください。
- 歯の根の部分(白くないザラザラした部分)は触らない・こすらない・洗わない。土や砂がついていても,軽く流水ですすぐ程度にとどめます。
- 保存は「歯の保存液」(市販・学校の保健室にあることも)がベスト。無ければ牛乳に浸けます。水道水は長時間だと歯の細胞を傷めるため避けます。
- お子さんが落ち着いていれば,本人の口の中(頬の内側)に入れて運ぶ方法もあります(誤飲に注意)。
- 30分以内,遅くとも60分以内に歯科を受診できると,再植(元に戻す治療)の成功率が高まります。
なお,乳歯の場合は原則として元に戻しません。永久歯の芽(歯胚)を傷つけるおそれがあるためです。自己判断で押し込まず,そのまま歯科へご相談ください。
② 歯が欠けた・割れた
- 欠けた破片があれば,牛乳か保存液に入れて持参してください。接着できる場合があります。
- 口の中をうがいできれいにし,冷たいタオルで外側から軽く冷やします。
- 当日〜翌日中には歯科を受診しましょう。
③ 歯がぐらぐらする・ずれた・めり込んだ
- 無理に動かしたり,元の位置に戻そうとしないでください。
- 硬いものを噛ませず,できるだけ早く歯科を受診します。
④ 見た目は大丈夫そうでも
その場では問題なく見えても,数日〜数週間後に歯の変色(黒ずみ・ピンク色化)や歯ぐきの腫れが出ることがあります。打撲した歯は神経がダメージを受けている可能性があるため,見た目に異常がなくても一度は受診することをおすすめします。
どこを受診すればいい?
- 平日の日中:かかりつけ歯科,または小児歯科
- 夜間・休日:各都道府県の休日歯科診療所や歯科医師会の休日急患センター
- 強い外傷・頭部打撲を伴う場合:まず救急外来・小児科
お住まいの地域の歯科医師会ホームページに,休日・夜間の窓口が掲載されています。
費用と治療期間の目安
| 治療内容 | 保険適用 | 自己負担の目安(3割) | 治療期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 初診・レントゲン・応急処置 | 保険適用 | 3,000〜5,000円程度 | 当日 |
| 再植・固定(抜けた歯を戻す) | 保険適用 | 5,000〜10,000円程度 | 固定2〜4週間+経過観察数か月〜数年 |
| 欠けた部分の接着・レジン修復 | 保険適用 | 1,500〜4,000円程度 | 1〜2回 |
| 神経の治療(根管治療) | 保険適用 | 3,000〜8,000円程度(回数分) | 数回〜数か月 |
| 見た目重視のセラミック修復 | 自費 | 1歯あたり5万〜15万円程度 | 2〜4回 |
多くの場合,小児の未就学児は子ども医療費助成により自己負担が軽減される自治体が多いです。お住まいの市区町村の制度をご確認ください。
受診後の経過観察が大切です
歯の外傷は,受傷直後だけでなく,その後数か月〜数年にわたって経過を観察する必要があります。特に乳歯の外傷は,その下で育っている永久歯に影響が出ることがあり,永久歯が生え変わるタイミングで色や形の異常が見つかることもあります。定期的なチェックを続けましょう。
ご家庭で気をつけたいこと
- 受傷後数日は,前歯で硬いもの(りんご・フランスパンなど)を噛まないようにしましょう。
- 歯みがきはやさしく。ぶつけた部分は無理にこすらず,うがいを中心に。
- 痛みや腫れが強い,眠れない,発熱などがあれば早めに再受診を。
お子さんの歯の状態や治療方針はお一人おひとり異なります。ここでご紹介した内容は一般的な目安ですので,気になる症状がある場合は必ず歯科医師にご相談ください。
まとめ
子どもが前歯を打ったときは,①落ち着いて全身状態を確認,②抜けた歯は乾燥させず牛乳か保存液で保存,③できるだけ早く歯科へ――この3つを覚えておいてください。すぐに動けるかどうかで,お子さんの大切な歯を残せる可能性が変わってきます。
参考情報
- 厚生労働省「e-ヘルスネット」歯・口の健康に関する情報
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
https://www.jda.or.jp/park/ - 一般社団法人 日本外傷歯学会「歯の外傷治療ガイドライン」
https://www.jadt.jp/ - 一般社団法人 日本小児歯科学会
https://www.jspd.or.jp/ - International Association of Dental Traumatology (IADT) Guidelines for the Management of Traumatic Dental Injuries, Dental Traumatology, 2020
⚕️ 医療情報についてのご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としており,個別の診断・治療の代替となるものではありません。 症状・治療方針については,必ず歯科医師にご相談ください。 掲載情報は執筆時点のものであり,診療内容・費用・制度は変更される場合があります。
監修:岡村 裕彦(歯科医師・大学教授)|所属・経歴はプロフィールへ ›
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